「正義の味方」のこぼれ話


 砂城さじょうの世界観と、主人公、黒羽&白鳥の設定についての、初期こぼれ話です。 
といっても、ぶっちゃけて言ってしまえば、基本的にどーでもいい話です。
「正義の味方」を読む上で知っておいた方がいい話とか、その他過激な話や、エッチなエピソードや、秘密とかは特にありませんので、興味のある方だけ読んでやってくださいませ。


 話を考え始めた一番最初は、やはりイメージが決まらなくて、色々ぐるぐる迷いました。
まず、銃の使用がOKの街。
これでイメージしたのは、もちろん銃社会アメリカです。
という訳で、初めのうちは、もっとずっとアメリカンポリスみたいに描くつもりでした。逮捕する時、権利を読み上げるとかね。
(権利を読み上げるシーンって、アメリカ映画でよくあるヤツです。
犯人を捕まえた時、
「権利を教えてやれ」「ひとつ、お前には黙秘権がある。ひとつ、お前の発言は裁判で不利な証拠として使用される事がある。ひとつ…」
とか刑事が言うアレ。最初はやるつもりでした。結局カットしましたけど)
もっとも、少しだけイメージが残っています。突入シーンとか、容疑者の体を調べるシーンなどは、アメリカンポリス風になってます。

「アメリカンポリス」と「西部劇」
正義の味方は、まずはこの辺りがイメージの発端でした。
なにせ砂城のアンダーはフロンティアですから。西部劇入っています。
そして、西部劇といったら、私が最初に思い出すものは『ジョン・ウェイン』と『ジュリアーノ・ジェンマ』の二人です。

ここで、ちょっと西部劇に詳しい方には、ネタバレしちゃったと思いますが。
はい。黒羽の片手撃ちはジョン・ウェインが元イメージです。
彼は大きい男で(黒羽と違って、がっしり体型ですけどね)片手でライフルを振り回して撃つのを得意としていたんです。
西部劇たくさんあれど、ライフルを片手で撃つ(かつ、サマになる)男は彼くらいです。
長くてでかいライフルを片手で、軽々廻しながらのガンアクションは、迫力で派手で好きでした。
いかにも、独壇場。ここが見せどころ。
あのアクションは、彼しかできません。
ジョン・ウェインがおやじになってからも、あれをやられると、カッコイイーっと思ったものです。


絶対主人公にはこれをやらせたい。
という訳で、片手で長い銃を撃つ男の誕生となったわけです。
ライフルではなくショットガンなのは、西部劇じゃなくて、アメリカンポリスだから。
アメリカンポリスといったら、ショットガンだろう、なので。
いや、アメリカ警察に詳しい訳じゃないですけどね。
映画とかでは、よく制服警官がショットガン持ってポンプアクションしているシーンを見るし。
どうやらパトカーには常備してあるらしいです。ショットガン。
でもアメリカンポリスの持っているライアットショットガンは、基本的にもちろん両手で持って操作するもので。
片手で扱わせたいとなったら、やっぱりもっと取り回しのしやすい短いものがいいよね。
じゃあショットガンの銃身を短く切ったものを持たせるか。

そんな訳で、西部劇とアメリカンポリスの二つの融合から
『ソウドオフショットガンを片手で撃つ男』
のイメージが誕生したのでした。
もちろんでかい男です。派手にアクションしなくてはいけません。
片手で軽々、銃くるくるです。
美人で力持ちの男♪
人は自分に無いものを求めて、作品を書くらしいですが、まさしくその通り。(私はチビで非力です。ううむ…。力持ちって憧れだ)

しかし、力持ちにはしたかったけど、クールビューティーなのにがっしり系大男(しかも受)という感じにする趣味は私にはないので、黒羽は普通に筋肉は付いてますが、力持ちな割にすらりと痩せていて体重はない、という設定になってます。
まあいいのです。ドリームですから。(笑)

西部劇のもう一つ、ジュリアーノ・ジェンマの方は、実は彼の出演した映画のいくつかから、イメージ引っ張ってきてます。
こっちはジョン・ウェインほど特徴があるわけではないので、一発で解るという事はないと思いますけど。(イメージだけですしね)
まあ、こんな感じで。
西部劇のイメージが強かったので、黒羽が持っているショットガン以外のハンドガンは、全部リボルバーになりました。


 黒羽の話ばかりしてしまいましたが、とにかく彼の方に特徴を付けるつもりだったので、どうしても、キャラ設定こぼれ話を語ると、黒羽がメインになってしまいます。
白鳥は健全な普通の男で行こう。
曲がってて複雑なのは一人で充分、と思っていたので。(^_^;
カップルが二人とも曲がっていると、どうも病んでる感じになってしまって。
読む分にはそういうカップルも好きなんですが、自分で書くとなると、二人とも病んでる話は書きにくい。
だから香澄は、過去こそ色々あるけど、基本的には普通の男。
前向きで、真面目で、よく笑う好感が持てる男。
そんな感じでいこうと思いました。

ただ実は、この辺でやっと香澄のキャラのこぼれ話になりますが。
本気で最初の頃、黒羽と香澄の設定が、逆だったことがあったのでした。
逆と言っても、クールビューティーで力持ちで、片手ショットガンの方が黒羽というところは変わりません。
ただ、外から来たのが黒羽、アンダーにいたのが香澄、という設定も、ごく短期間ですが、考えていたのです。
まだストーリーを色々決める前の話ですけど。
外から来た真面目でもの静かな銃の天才が、アンダーで香澄と出会って、色々振り回されながら次第に香澄を好きになっていく、という方向性です。

二人のうち、どちらを外から来た男にするか。
ぐるぐると考えて、イメージシーンを幾つか書き散らしてみました。
そしたら
何だか香澄が、みょーに影があるイメージになってしまったんです。
ううん、なんか違うなー、と思ったので、今の形になりました。

つまりまあ、アンダーに謎がある訳なので、アンダーに住んでいる人間の方が、どうしても秘密めいたイメージになってしまうんですよ。
すると、香澄が隠し事をしているようなキャラに、なってしまう。
しかもアンダーの住人なので、ナイフを服の中に忍ばせているようなキャラになっちゃって。
そこはかとなく、チンピラくさい…。
もっともその時は、香澄の方は警察ではなく、一般市民で、外から来た警察の黒羽が香澄を助けて、次第に仲良くなっていく、という方向性も視野に入れていたので、チンピラでもいいと言えばよかったのですが。
(拳銃使いとナイフ使いのコンビにしようかな、という思惑も少しあった)

結局、そういう香澄を上手く動かすことが出来なかったし、話も広がりそうになかったので、本当に早々に、その設定は捨てました。
二人とも警察にしよう。
警察内のコンビにしよう。
外から来たのは香澄の方。
という形にしたら、たちまち話が動き始めたので、今の形が正解、ということなんでしょうね。
少し書いてみて違和感がある場合は、どういじっても最後には行き詰まってしまうらしいです。
やはり、どこかに無理があるのでしょう。




物語を作る時、キャラが先に出来る場合と、設定やストーリー展開が先行する場合と、二つあります。
人によっては絶対にキャラが先、とか決まっている人もいるみたいですが、私の場合は、その時々で違います。
キャラが先行している時は、イメージがカッチリ決まっていますから、上記のような逆バージョンなんて絶対ありえないのですが、「正義の味方」の場合は、砂城アンダーの設定の方が先でした。
もう少し詳しく言うと。
イラストがまずあって、主人公はこの二人に決定。
でもまだ設定全然決まっていない。
砂城アンダーの世界観はこんな感じ。
この中にどういう風に二人を放り込むか。
こんな流れで話を作っていったんですね。
だから、逆も可能性としてはアリだったのです。
今考えると、もう今の設定以外なんてありえないー、なんですけどね。

もう一つ、香澄に関して大変バカバカしいこぼれ話があります。
実は私は、キャラの名前を考えるのが基本的に苦手で、とってもぐるぐるしてしまう方なんですね。
でも、黒羽と白鳥。
この名字は、すらっと決まりました。
黒白で、両方とも羽、というイメージであっさり決定。
ボーイズだから、比翼の鳥だよ。
などという単純思考で決められた名字です。
で、名前なんですけど。
私は実は、一発で読めないような難しい漢字を羅列する名前が、あまり好みじゃないんですな。
できるだけ平易な名前がいい。

黒羽は『くろはね』なんて、あまりしない読み方をさせてしまったけど、音を濁らせたくなかったので、仕方ない。
漢字は平易だから、よしとしよう、で自分的には納得して決めました。
白鳥のほうは文句なし。
漢字も平易だし、誰でも読める。
まさか、はくちょうとかしろとりとか読むヤツはおるまい。
名字はOK。
名前は…。
うーんと悩んだわりには、コウの方はあっさり決定。
実を言ってしまうと、高にあまり意味はありません。
(物語の中で、意味をつけていくことはあるかもしれませんが)
黒羽、と呟いたら、音でコウと口から出てきたので、これを天啓と名付けました。
ただ、漢字は少し考えましたけど。

高 昂 皓 航 蒿 

これだけ漢字を並べて、さあ選べ状態。
最初は蒿の方にしようかと思ったのですが、平易な方がいいなあ…という嗜好が勝って、高に決定。
航も少しだけそそられたのですが、廃棄。
(香澄が好きなドラマ、砂城西部警察の黒羽航一あたりに、名残が残っています)

白鳥の方は、最初から女の子みたいな名前にしようと思っていました。
女でも男でも使える名前(かおるとかひろみとか)でもよかったんですが、あえてかすみを選択。
かすみ、なんて通常考えたらバッキリしっかり女名です。
にもかかわらずつけたのは、実は実際に「香純」という名前の男の人がいることを知っていたからなんですね。
かおるとかひろみより、ずっと女の名前くさい。
にもかかわらず、ちゃんとかすみという名前の男の人がいる。
よーし、かすみに決定。

そういう理由だったので、香澄は最初『香純』でした。
ずっと香純で書いていたんです。(いや、書いていたつもりでした)
ところが、私、文章は一太郎で書いているのですが、何故か一太郎くんが、途中で『香澄』に勝手に変換を変えちゃったんです。
なのに、ずーっと変換違いに気付かないまま話を書き続けてて。
かなり書いてから、はっ! 名前の漢字が違う。
と気付いた次第。(マヌケ)

なんとアホーな事に、『香純』で書いているのは、最初の3回くらいまでで、あとは全部『香澄』

…………。

どうしよう。なんか、殆ど香澄になっているし。
えーい、もういいや。香澄にしちゃえ。
一太郎には、単語を選んで、簡単に全部一発変換できる機能が付いているのですが、当時の私はその機能を知りませんでした。
で、一つ一つ手で直すことを考えると…。
結局、より直すのに手間のかからない『香純』のほうを廃棄したのでした。
つまり要するに。
香澄の漢字は一太郎くんに決めて貰ったと。
何だかマヌケ。

どうして途中からいきなり一太郎が変換を変えたのかは知りませんが(いや実は、よくあるんですけどね、そういう事)まあこれも運命ということで。
今はもはや、香澄以外には考えられません。
何かが決まる時って、そういうものかもしれませんな。

そんなわけで、こぼれ話はこの辺でお終いです。
一つの物語の背景には、色々な事情も、ロクでもない偶然も転がっている、という話でした。

END

当時の覚え書きメモ