初めてな単語


ボーイズを書くようになってから、初めて使った単語があります。

「抽送」

もちろん、ここにいらして、私の拙い小説を読んでくださっているボーイズ世界の諸先輩方は、皆ご存じの筈。
ナニを出したり入れたりする動き。ピストン運動とか言ったりもする、エッチには欠かせない動きです。
ボーイズだけではなく、あらゆるエロ小説に、無くてはならない単語でしょう。

しかし、もちろんこの言葉は、大変特殊状況下(要するにセックス)だけで使われる言葉であり、私は今までまったくその世界に書き手としては関わってこなかったので、いざその単語を使用しようとした時、そこはかとなく朧げには覚えていても、正確にどんな単語だったか思い出せなかったのです。
(同人歴長いくせに、ALL健全一筋。…いやシモネタなら書いたけど)

はて…。あの単語は正確にはなんと書くのかなあ。
ボーイズとかエロ小説とかで、何度も見た事はあるんだけど、ぼんやりと曖昧にしか思い出せない。
そりゃもう皆さんも、漢字テストとかで似たような状況になったことがおありでしょう。
ここまで出てるのに、というか、全体像がおぼろに現れてはくるが、つかみ所がまったく無く、追いかけるとするっと逃げてしまう様な、あのもどかしい感覚。

そういう時に、こうだったかなあ、とうろ覚えで漢字を書くと、大抵、似ているがどこか違う(というかあきらかに違うんだけど)創作漢字が出来上って、やっぱり頭を捻る、という事態になります。
パソコンで文を打っていると、創作漢字はさすがに出てこないのですが、その代わり書く事ができなくなる。

で、まあ。
普通の漢字忘れならですね。辞書を引けば済むんですよ。
文を書くにあたって、私も辞書の数だけは揃えてみました。
が、実は「抽送」読み方もよく解っていなかったりする。
大体ボーイズやエロ小説で、こんな基本の単語に「ふりがな」がふってある筈は無いし。
そのまま読むと「ちゅうそう」 なのですが、今の段階では、抽送という単語の形自体が良く思い出せず、更に読み方もよく解ってない、何もかもダメダメ状態なわけですから。
こういうのを「お手上げ」というんだな、と思い知るばかりです。

かといって思い知っているだけでは、エッチシーンが滞ったままになってしまいます。
ここはなんとしても、正しい字を探っていかなくてはなりません。
(でないと挿れられたまま、おあずけ状態になっている黒羽が、最後までイケな…げふげふ)
まあ、おぼろげながらもデタラメな漢字を書いてみようじゃないか。
手じゃなく、パソコン上で。

というわけで、思いつく限りの連想ゲームをやってみました。
要は入れたり出したりする単語なのよね。

 

 

入れるのは「挿入」 ←これもエッチでは必須用語
出すのは…「排出」とは言わんわなあ。

対応する単語が、特殊世界で変わってくるのはよくある話。
「攻め」と言ったら、本来、対応する単語は「守り」です。
攻めるも守るもくろがねの〜♪
などと軍艦行進曲を歌っている場合ではありません。
もちろん、ボーイズ世界では
「攻め」に対応するのは 「受け」 です。
攻めてきたならば、もちろんどーんと受けねばなっ。
男なら受けて勃て!

……じゃなくて。うーん、ううーん…。
考えたのですが、「排出」に相当するボーイズ用語が思いあたりません。
(何かあるのなら、ぜひこっそり教えてやってください)

もしかしたら、「出す」は違うかもしれん。
入れる、出す、みたいな単純な単語ではなかったかも。
と思い直してみます。
でも、「挿」って字は使ってあったような気がするなあ。
そうだよね。出すはともかく、入れるのは間違いないんだから、挿の字は使っているよね。
よし、OK。
…って、全然OKじゃないんですが
(抽送には、挿の字なんて使ってないじゃん)
私は間違ったOKを自分自身に出して、先へと進みます。

その調子で、ぐるぐると朧げな記憶を探っていきます。
むむむ。なんか、後ろの漢字は「送」だったような気がするぞ。
送り込むって感じ。
そーすると、ええと。

「挿送」?

……なんて読むんだよ。「そうそう?」
そこはかとなく首を捻りながら、でも今までで一番記憶に嵌まっているような字面な気がします。
ちょこっと収まりの悪い、いびつな感じは、とりあえず横においといて。
形が決まったからには、ここで「検索」ですよ。
この単語があったら勝ち。無かったら負けざんす。
(いつから勝負に…。それより黒羽は、挿れられたまま半日ほど放っておかれています(泣)

さあ、いざ Google!
「挿送」で勝負。ボタンぽちっとな。



挿送 の検索結果 約 7,150 件

よーし、やった!
たくさんあります。ありますぞーっ。
挿送は正しかったかっ!

……ん?
イヤ待て。ちょっと待った。

たくさん検索で引っかかる事は引っかかったのですが、どうも様子が変です。
なんと言いますか、その。
サイト数はたくさんあるんですけどね。
でも検索で引っかかったサイトの、その内容っていうのが…。

「医療教育教材−気管挿管トレーナー」 だとか
「医療診断器具−内視鏡」 だとか
「みんなの救急−気管挿管、静脈の確保」
とかばっかりです。
どうやら「挿」の字と「送」の字がバラバラに検索に引っかかっている模様。
うう〜む、これは…。
いや、よく見ると、エッチシーンに「挿送」を使っているサイトも、ある事はあります。
使用状況は、私が考えていたのと同じシーンの模様。
(要するに突っ込んで、出したり入れたり…)

だがしかし……。

正しいと言うには、あまりにも違うサイトが引っかかりすぎてやしないだろうか。
本当に正しいなら、もっと沢山のエロサイトが引っかかってもいい筈ではないか?
エロ少なすぎ。
つまりこれは、ええと。
冷静に判断するに。
7,150 件引っかかっても、多分間違っているんですな。
だが! 7,150 件引っかかったって事は、この勝負痛み分け!
……じゃなくて、負けでしょうがよ。負け負け。
完全敗北。だめじゃん私。

再び振り出しに戻ってしまいました。
挿送が間違いなら、どうすればいいのでしょう。(;´・`)

思わずため息をついてしまいましたが、ここで諦めても一歩も進みません。
そうよ、せっかくGoogleが開いているんだし。
エロっぽい単語を入れて検索かけてみたら、あたったサイトの中に目的の単語が入っているかもよ。
という訳で、再度チャレンジを試みました。
検索単語は、半角開けて

「挿入 送 セックス」

用語選択の理由は以下の通り。
『挿入』絶対やる行為だから。(この後出し入れするわけだしね)
『送』 この字が入っていた事は確実な気がする。
『セックス』エロに限定しないと、また医療用語がヒットしてくるので。

そして再び GoogleでGO!




………………。

ヒットしました。 やりました。
字を見た瞬間、「君だ! 私が会いたかった文字はっ!」
と思ってしまいましたとも。
『抽送』そうです。
『抽送』『抽送』『抽送』!!

字面が解ったので、さっそく『抽送』で検索をかけてみました。
したらもう、出るわ出るわ。
検索結果は16,400 件 。
しかも、めくってもめくってもめくっても、エロサイトしかありません。
よし、今度こそ私は正しい道にたどり着いた。
やったーっ。バンザーイ♪
これで香澄ちゃん、いつでも行けます。
ガンガン腰ふって、黒羽を思う存分イかせてやってくださーいっ!

しかし、いやもう…。
いったい何をやっているのか。
エロ用語なんぞに、超真面目に全力投球。
しかも半日かけて…。
人間何かに真剣に取り組んでいる姿は『美しい』そうですが
『抽送』を真剣に検索する姿は、美しいのか情けないのかアホなのか、大変ビミョ〜な所かと思います。

ちなみに、抽送は国語辞典には載っていません。
私はさっそく「抽送」を辞書登録いたしました。

END

 

 

【おまけ】

抽送で検索をかけると、最初にヒットするのが
「フランス文化用語辞典」
なるサイトです。
もちろん、フランス文学について語った用語辞典サイトではございません。
エロで有名な「フランス書院文庫」の用語辞典です。
ここで『抽送』を引くと、こんな説明が出ます。

【抽送】(チュウソウ)
 
一見、国語辞書に載っていそうで、実際にはない。
しかし官能小説では必修の単語がこれ。
性交時、入れたり出したり、押し込んだり引いたりする、ピストン運動のことである。
辞書に載っていないのは、「抽迭」(ちゅうてつ)が正しいのに、誰かが間違って使いはじめたため。それがいつの間にか官能小説では一般化してしまったのだ。
「抽」は「抜く」、「迭」は「するりと入れ替わる」の意味。
ちなみにフランス書院編集部は全員、ワープロやパソコンに抽送を単語登録している。

うむ。勉強になります。
読み方も『ちゅうそう』で正しかったようです。
そしてこの言葉は、本気でエロ専門用語のようです。
ということは…全部めくったわけではないけれど。
検索かけた16,400 件。もしかして全部が「エロサイト」?
う〜ん。凄まじい…。
いやまて。それが普通か?
コミケにだってそれくらいサークルあるぞ。
ネットなら、もっとあってもいいよね。
ま、検索よけとかで隠れているのかもしれませんが。

やはりエッチは、人間に無くてはならないもののようです。
しみじみ。

「フランス書院用語辞典」
エロ用語を探している人には、それなりに役立つかもしれません。
(ボーイズじゃないけど、ま、やる事は殆ど一緒だしね)
御覧になりたい方は、こちらです。
http://www.france.co.jp/bunko/yougo/yougo.html